臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 嬉しそうに話す綾香へ康平が訊いた。

「内海の兄さんってどんな人?」

「……兄貴は康平君達と最近会ってるよ」

「ゲッ! やっぱそうだったんだ。同じ名字だから、もしやって思ったんだよ」

「ボクシングの事は分からないけど、兄貴の普段の生活は結構デタラメだよ。この映画のチケットだって、合コンでベロンベロンに酔っ払って、何も覚えていないのにポケットに入ってるからって、私にあげるって言うんだから」

「……す、凄いね。でもボクシングは本当の意味で凄かったよ。練習中は真面目だったしね」

「確かにそれはあるかも。試合の一ヶ月前からは、必ず夜の十時半までに寝るもんね」


 二人の会話を聞いていた亜樹が口を挟む。

「ハイハイ! 此処はどこで何をする所かな?」


「ゴメンね。亜樹さん抜きで会話しちゃって」

 綾香に続いて康平が言った。

「亜樹さんのご機嫌が、これ以上悪化しないうちに勉強しようぜ」


「チョットそれどういう意味よ」

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