臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
恐い二人の大学生
午後二時半、康平は少し早めに練習場へ向かった。
昨日、一人だけ戦意喪失という理由で止められた事が悔しいようだ。
康平が練習場へ着くと、三人の二年生達は最後の柔軟体操をしていたが、いつもよりバテていた。
練習場で汗を掻きながら準備体操を始めた康平に、内海が話し掛けた。
「お前、高田だったよな? 随分ハエーな。……一人だけスパーを止められたのが悔しいのか?」
「悔しいというか恥ずかしいです」
「最初はよくある事さ。……大体さぁ、初めてのスパーで普通に殴り合える奴なんてのは、今までロクな事してこなかった人間が多いんだよ。……コイツみたいにな」
山本が、内海をチラっと見てから言った。
「ウルセーぞ賢治。……男は見栄を張る生き物だからな。恥ずかしい気持ちがあれば強くなれっからよ」
二人の大学生は気さくに康平へ話し掛けていた。
二時五十分頃、白鳥が練習場に入ったが健太と有馬はまだ来ていない。