臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 さっきまでの口ゲンカは一時休戦し、健太が別れ際に言った。

「二年の森谷さんに相談してみようぜ」

「そうだな、昼休みでも行こうか」

 二人は真っ直ぐ家に帰って行った。



 月曜日の昼休み、康平と健太はボクシング部二年の森谷へ相談しに行った。

 森谷は康平達と同じ中学の先輩で、ゲームセンターで会うとたまに話すような間柄だった。

 何をされる訳でもないのに、ちょっと緊張しながら先輩がいる教室へ向かった。すると、森谷は相沢と廊下を歩いていた。

「なんだお前ら、こんな所でどうしたんだ?」

 森谷が康平達に訊いた。


「……せ、先輩達に用があったんです」

 健太は森谷だけに相談する訳にはいかず、咄嗟に嘘をついた。

 相沢がいることは予想外だったが、彼は自身が先生から怒られた事を康平達に教えてくれた人で、二人にとっては好感の持てる先輩だった。

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