臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平は言われた通りにやったつもりだったが、内海のイメージと違うようだ。

「康平……ちょっと肩の感じが違うぞ。肩はなぁ……あぁ面倒臭え!」

 言葉に窮した内海は、手を使って強制的に康平の肩を修正する。彼は康平の肩関節を前に入れた状態にしたかったのだ。

「感覚を言葉にすんのは難しいんだよ。俺を困らせたくなかったら、今のフォームを崩すなよ。それと康平はパンチを打つ時、顎が上がり気味だからそれも直せ」

「ハイ!」

 返事をした康平は慎重にパンチを打つ。構えを変えてパンチを打つと違う筋肉を使うようで、康平は力みまくっていた。


「ハハハ! 養成ギブスでもしてるような力みっぷりだな。フォームを変えた時はそんなもんだ。……俺ぁ、梅ッチと違って優しいからよ。リラックスは注文しねぇから、とにかくフォームを意識して十ラウンドのシャドーを続けろや」

 内海は、自分が梅田と違う事をアピールした。


(いや、同じ位恐いんですけど……)

 そう思いながらも康平は返事をした。

「ハイ!」

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