臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 山本と内海は、練習場の真ん中に椅子を置き、座りながら四人の練習を見ていた。

 山本が口を開く。

「健太とタケ(有馬)は、左右の動きをもっと使ってみろ。打った後すぐに動けよ」


 内海は康平だけを見ているのが退屈なようで、白鳥にアドバイスをした。

「翔! オメェはパンチを打つ時、踏み込みをもっと大きくしろ」

 内海達は、一年生達を名字ではなく名前で呼んだ。

 白鳥は、彼なりに大きく踏み込む。

「まだ踏み込みが足んねぇぞ。オーバーな位大きく踏み込め」

 内海がそう言うと、山本もアドバイスを加えた。

「そうそう、実戦になるとどうしても体が萎縮すっからよ。シャドーの足の動きは大きくしろや。健太とタケもだぞ!」


 内海と山本は談笑しながら、時折四人のチェックをした。

 山本が健太に言った。

「健太! 左のガードの位置は口の前に置け。右構えと戦う場合だったらガードはその位置だ。……それと、今は左ストレートを打ったら全部右フックまで返せ。前足の悪い癖を直してぇからよ」

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