臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 質問されて嬉しいのか、山本は笑顔で答えた。

「おう、何でも言ってみろ」

「左ジャブの事ですが、狙わないで打つ意味をあまりよく分かってないんスけど……」

「じゃあ逆にお前らに質問するが、ボクシングのパンチの中で一番弱いのは何だ?」

「……ジャブだと思います」健太が答えた。


 今度は内海が話す。

「そうだ。ジャブは弱いからカウンターを狙われ易いんだよ」

「カウンター……ですか?」

 康平が言うと山本が説明した。

「カウンターってのは、簡単に言えば相手のパンチに合わせて打つパンチの事だ」


 内海も説明に加わった。

「カウンターは、当たればそれで試合が終わってしまう位のダメージがある。……だが、失敗したら逆に相手のパンチをもらってしまうリスクもあるんだ」


 今度は山本が話す。二人は、康平達に教えたくて仕方がないようだ。

「ジャブに合わせてのカウンターだったら、失敗しても貰うのはジャブだからリスクは少ないって訳だ。それに……」

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