臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 健太が話を戻した。

「あのう、だったらジャブは打たない方がいいって気がするんですけど……」


 内海が笑った。

「ハハハ! そんな単純に考えんなよ。ジャブは、試合を作っていく上で重要なパンチだ。距離を図ったり、相手の体勢を崩したりするのに結構使えっぞ。……それにジャブが当たった後に強いパンチを追撃すれば、カウンターに負けない位のダメージを与えられるからな」


 山本が有馬に向かって言った。

「ところで本題に戻すがよ。ジャブを狙わねぇで打つってのは、そのカウンターを貰わねぇ為に打つんだよ」

「でも、狙わないで打つパンチって当たるんですか?」

 有馬が訊いた時、二人の店員が注文した料理を持ってきていた。

 山本が言った。

「オッ、メシがきたから食いながら話すぞ。タケ、俺のウィンナーを箸でとってみろ」

「えっ、いいんスか?」

 有馬は、箸でウィンナーを一つ摘まんで口にした。

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