臆病者達のボクシング奮闘記（第一話）

　六人は、食事が終わって一息ついた。

　内海が一年生達に訊いた。

「オメェら帰りは大丈夫か？　電話したい奴がいれば俺の携帯貸すからよ」


　白鳥が言った。

「ス、スイマセン。では少しお借りします」

「……ああ、いいぜ」


　白鳥は丁寧にオジギすると、電話をする為に席を外した。

　山本がボソっと話す。

「まだ六時半だぜ……あいつ、過保護な家の坊っちゃんか？」

　康平達は顔を見合わせた。そして、白鳥は自分の家に住んでいないから気を遣っているんだろうと思った。

「いや、そんな事はないッスけど……」有馬が答えた。


「何か事情がありそうだな。……まぁいい、他に質問したい奴はいるか？」

　内海へ健太が質問をした。

「今日の練習で、左のガードを口の前に置くように言われましたけど、何か理由があるんですか？　それと、当たらなくても左ストレートの後は右フックを返すようにも言われました。それも一緒に教えて頂きたいです」