臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 内海が少し悩み、質問に応えた。

「これは実演した方がよさそうだから、明日練習の時に教えるぞ。ここで実演する勇気は俺にもネェからな」

 白鳥が戻り、内海に携帯電話を返す。

 山本が白鳥に訊いた。

「翔、オメェは訊きてぇ事はネェのかよ?」

「……あの、相手に近付く時に、ジャ、ジャブを二発以上打つように言われたんですけど、り、理由があれば教えて頂きたいです」


 内海が吹き出す。

「ぶっ、そんな緊張すんなよ」


 山本が白鳥に言った。

「さっき、ジャブについて話したよな?」

「はい。ジャブはカウンターを狙われ易いって聞きました」

「だがな、二発続けて打つとカウンターは貰いにくいんだよ。あくまで確率的なんだがな。……お前は背が低いだろ? だから遠めの距離から、ジャブを二発以上打って相手との距離を詰めたいんだよ」

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