臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「分かりました。……あ、あと、うちの学校ではパリーイングを教えないんですけど、な、何か理由があるんでしょうか?」

 再びドモリながら白鳥が質問をした。

 内海が笑った。

「おいおい、緊張している割に遠慮がない奴だなぁ。……パリー(イング)はどんな防御か知ってるのか?」

「本屋で立ち読みして、相手のパンチを手で払う防御だって知りました」

「まぁ、大まかに言えばそんなところだ。主に相手のストレート系に対する防御だがな。……ちょっとパリーを多用すると、危険な所がある」

「それは、どんな所ですか?」

 康平が訊くと内海が答えた。

「レベルが上がってくると、パンチの軌道を変えて打つ奴が出てくるんだよ。……特に利き腕で打つパンチだけどな。具体的には、打ち始めがストレートなのに途中からフックになるのが多い。ストレートだと思ってパリーしたら、外側からガラ空きの顎にフックが直撃するっていう寸法だ」

「たぶん梅ッチも、それを避ける為に教えてネェと思うぜ」

 山本が言った後、内海は康平を見た。

「オメェは何か質問ねぇのかよ?」

「……あの、今左フックを習っているんですが、パンチが届かない気がするんですけど」

< 215 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop