臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 会話をしながら準備をできる空気ではなかったので、一年生達は先輩達の練習を見ながら黙ってバンテージを巻き、柔軟体操を始める。



 ようやく先輩達の練習は終わったが、康平達は昨日より緊張していた。

 二年生に指導している時と違い、山本が笑顔で一年生達に話す。

「お前ら気合いは入っているようだが、硬くなんなよ」


 内海もリラックスした表情で言った。

「そうそう、今オメェらがしなきゃならねぇのは、フォームを固める事だからな。そして梅ッチが戻ってきたら俺達とスパーすんだが、その時にキチンと打てるかが当面の目標だからよ。……最初は昨日と同じで、鏡の前で三ラウンドのシャドーだ。康平、今日はオメェも他の奴らと一緒だ」


「いいか! これから練習を始めるんだが、何に気を付けて練習をするか頭に叩き込んどけよ。じゃあ、ブザーが鳴ったらシャドー開始だ」

 山本はそう言ってタイマーのスイッチを押し、一年生の練習は始まった。

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