臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 こうして練習は進んでいったが、筋トレの前に内海が口を開く。

「昨日健太が質問してた左ガードの位置の事だが、他の三人もサウスポーと戦う時もあるから、みんな聞いておけ。健太、俺と戦うつもりで構えてみろ」


 健太は言われた通り、内海と対峙した。

 サウスポーの健太が右半身を前に出して構えるのに対し、オーソドックススタイル(右構え)の内海は左半身を前に出している。

 内海が言った。

「健太、オメェ習ってねぇかも知んねぇけど俺に左のフックが打てるか?」

「……いいえ、怖くて打てないです」

「何で怖いんだ?」

「……内側から右ストレートを打たれそうな気がするんですけど……」

 自信無さげに健太は答えた。


「不安な顔すんなって。俺だって怖くて、オメェに右フックは打てねぇんだからよ」


 山本は、健太以外の三人に向かって話す。

「オメェら分かったか? サウスポーの相手は、怖くて利き腕のフックは打てねぇんだよ。……サウスポーの左パンチで打つ確率が高いのはストレートだ。……まぁ、ボディーブローもあっけどな」

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