臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「どんなスパーリングだったんですか?」


 有馬に訊かれて、内海が笑いながら説明した。

「石山は背が低いだろ! パンチが届かねぇもんだから、何を思ったか、両手を伸ばしたまま相手に突っ込んで行ったんだよ。それも下を向いたままな」

「俺も、アイツは何のスポーツをやってんだろう……って一瞬思ったぜ」

「梅ッチも、怒鳴るのを忘れて唖然としてたんだよな」

「清水も傑作だったよなぁ。ビビって目を瞑ったままパンチを出してんだよ」

「そうそう、相手が右側に逃げてんのに、目を瞑ったまま五発位そのままパンチを出してたんだよな」

「それも力が入ってガチガチだったから、壊れたオモチャみたいだったぜ」


 内海と山本は過去を懐かしむように、自分達だけで盛り上がっていた。


 健太が強引に会話へ入った。

「信じられないですね。清水先輩も、右手の骨折がなければ県大会は優勝しそうだったんですけどね」

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