臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「ハイ、先輩達に聞きました」有馬が答えた。

「だったら話は早いな。左手のリストは強かったんだが、左ストレートがある程度強く打てるまで、かなり時間が掛かったんじゃねぇか?」

「俺らが国体で引退する秋までは、ペラッペラな左だったぜ。……ただ剣道やってたせいか、足捌きは良かったけどな」

「この前、兵藤の練習見てたらオッカねぇ左を打ってたよな。それもノーモーションからな」

「あの左があるから、得意の右フックがよく当たるんだろうな」


「あっ!」

 健太は大きな声をあげた。


「どうした健太?」

 内海が心配そうな顔で訊いた。


「二日前に返しの右フックの事を質問したんですけど、……今教えて頂けますか?」

「バカヤロー! 人が心配してやってんのに変な事を思い出すんじゃねえよ」

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