臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 二日後の土曜日、昨日も勝ち残っていた石山と兵藤の試合結果が練習前に伝えられた。

 二人共、惜しくも判定負けで準優勝になった。


 内海が言った。

「残念な結果だが国体もあっからな。まぁ、オメェらに言ってもしょうがねぇんだけどよ。……健太、チョット来い」

 呼ばれた健太は内海の前に出た。

「健太、俺にゆっくり左ストレートを打ってみろ。オメェらも見てろよ」


 内海は健太が左ストレート打った時、後ろ足(右足)だけ大きく右側にズラす。

 後ろ足が右にズレた分だけ顔も右側にスライドし、パンチをかわした形になっていた。

 そして内海はズラした後ろ足を、すぐに前に蹴りながら右ストレートを打つ。寸止めで打ったので健太の顔面に当たる事は無かったが、内海の右拳は確実に健太の顎を捉えていた。

 健太の左ストレートをかわして打つ、右ストレートのカウンターである。

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