臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
内海の声が大きくなった。
「今の段階でカウンターを教えると、ロクなことになんねぇから駄目だ。今のオメェらに必要なのは、先手で攻める感覚と技を覚える事なんだよ」
健太と有馬は、納得しない表情だ。
山本が諭すように言った。
「先手で攻撃出来ないカウンターパンチャーなんて怖くネェんだよ。……二年の森谷がいるだろ。アイツは二年生の中じゃ一番勘がいいしパンチも見えている方だ。アイツはカウンターを狙い過ぎるところがあって、なかなか自分から攻めねぇ。全体的に待ちのボクシングなんだよな。だから、下手な相手にもペースを合わせてしまって凡戦が多いんだよ。……まぁ、この話は梅ッチから聞いた事なんだがな」
内海も声を和らげて話す。
「森谷の奴もそれを自覚してっから、今は先手で打つ技のバリエーションを増やしているところさ。アイツが先手で攻めながらカウンターを打てるようになると、レベルが数段上がるだろうよ」
「そうそう、待ってれば攻められるし逆に攻撃すればカウンターが飛んでくる。相手にしたらタマッタもんじゃねぇんだよ。……ただレベルが上がってくると、そういう戦いをする奴がゴロゴロいるから嫌んなるけどな」