臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 内海が健太と有馬に訊いた。

「ところでオメェら何でカウンターを打ちたいんだ?」

 健太と有馬は顔を見合わせたが、二人は話すのを躊躇していた。

「何だよ、笑わねぇから言ってみろ」

 内海に言われて有馬が答える。

「……DVDでプロの試合のKO集があって、それを見たらカッコ良かったからです」

 続いて健太も言った。

「有馬に借りたそのDVDと、家にあるマンガを見てカウンターを打ちたかったんです」


 内海と山本は不思議と笑わない。そして山本が言った。

「動機なんてそんなもんだし、上手い奴の試合を見んのはいい事なんだがな」

「そうそう、DVDを見るのは上達の近道なんだが一つだけ気を付けろ」

「それは何ですか?」健太が訊いた。

「打たれながら戦うボクサーを何度も見ないようにしろ」

「それはどういう事ですか?」

 内海に有馬が質問した。
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