臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「打たれながら頑張るボクサーは観客から感動され易い。根性が表面に出るからな。……確かにガッツは必要だし、戦うハートの強さもボクシングでは重要な事の一つだ。だが俺らは戦う側の人間だ」

 内海の話に不思議そうな顔をした一年生達へ、山本が言った。

「つまり、大変な思いをするのは俺達なんだよ。パンチがある奴のを食らうと痛いなんてもんじゃねぇぞ。頭にガーンと衝撃がくるからな。……お前らそんな思いはしたくねぇだろ?」

「はい」四人は素直に返事をした。


「でも、見るだけだったらいいような気がするんですけど……」

 健太は、二人の大学生に怒られるのを覚悟で反論した。

 内海は怒らずに言った。

「意外となぁ、画像に影響され易いんだよ。試合のDVDを見てから練習に行くと、微妙にその試合へ出ていた選手に影響されてるんだよ。……たぶん無意識のうちに体がイメージしちゃってるんだろうな」


 続いて山本が口を開く。

「打たれながらも戦うボクサーは、悪い言い方をすれば下手クソなんだよ。今まで防御の練習を疎かにしたツケが試合に出ちゃってんのさ」

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