臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 その後、フライ級(五十二キロ以下)、バンタム級(五十六キロ以下)と階級が上がっていったのだが、全体的には永山高校が優勢な試合が多かった。

 中でも目立ったのは、主将の石山(フライ級=五十二キロ以下)と、ライトウェルター級(六十四キロ以下)の兵藤(三年)である。


 石山は小柄でオーソドックススタイル(右構え)だが、左のパンチが恐ろしく強い。特に左フック・左ボディブローはブロックの上から当たっても、フライ級とは思えない凄い音がした。

 二ラウンド目に石山の左アッパーが顔面にヒットした。相手が千鳥足になりストップになった。


 ライトウェルター級の兵藤は、右利きなのだが構えはサウスポーだ。中学までずっと剣道をしていたそうで、本人の希望でサウスポーになったらしい。

 長身で細身だが利き腕の右フックが強く、そしてよく当たる。

 相手が強引に前へ出た時、兵藤の右フックが顔面にヒットして、相手は前のめりに倒れてしまった。


 相沢と森谷も、相手が三年生だと苦戦していたが、二年生相手だと有利に試合を進めていた。


 こうして全員のスパーリングが終わり、三ラウンドのシャドーボクシングを始めたが、永山高校の四人の一年生達は、どこか誇らしげに構えだけのポーズに集中していた。

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