臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 再び内海が言った。

「そういうボクサーは試合の後、顔がボッコボコになってんぞ。……オメェら、そんな選手になりたくねぇだろ?」

「はい」


「ところでタケ達が見たDVDは、カウンターで綺麗に倒すシーンが三試合あるやつだろ?」

「ハイそうです」

 山本に訊かれて有馬が答えた。


「あれは俺も見たけど凄かったな。あのシーンは何度見てもいいと思うんだが、今はカウンターを教えるつもりはねぇぞ。……理由はさっき言ったよな?」

「……はい」

 健太と有馬は力無く返事をした。


 内海が二人に言った。

「今日、オメェらは何を目標に練習するんだ」

「次のスパーリングまで、習ったパンチを打てるようになる事です」

 健太が答えると山本が言った。

「だったらそれに集中する事だな。これから嫌って程技を習うんだからよ」

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