臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 腰が引けず、勝手に六対四のバランスが保たれているようだった。

 何気無い言葉の一つで案外コツを掴んだりするものである。

 健太もハマったらしく、フットワークを使わずにブロックだけを使って康平のパンチを防ぐ。


 次のインターバルでは、内海が笑いながら言った。

「おいおい、少しはフットワークで避けろよ。……まぁ、今日はブロックのコツを掴んだようだから大目に見てやるがな」


 五ラウンド終わった時、康平は内海、健太は山本とミット打ちをする事になった。有馬と白鳥は形式練習の準備を始めた。

 内海が言った。

「康平、さっき俺が言った事忘れんなよ。常にグローブの間から相手を見ろ」

 康平は覗き見ガードで初めてのミットである。


 内海が右手を上げた。

 片手を上げた時、ジャブを打つサインなのは梅田と同じである。

 すかさず康平は左ジャブを出す。

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