臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 亜樹が吹き出した。

「顔のムクミをとる為に走る人って、なかなかいないよね」

「今日は、恥ずかしい程ムクんでたんだよ」

「事情は分かったけど、今日は早く帰った方がいいのかな?」

「とんでもねぇよ! 健太と綾香も楽しそうだし、俺も帰りたくねぇしさ」

 康平は即座に否定した。

「だったら二人に眠そうな素振りを見せないことね」

 キツい口調の割りに口許がほころんでいる亜樹を見て、康平はホッとした。



「誰かと思えば亜樹じゃねぇかよ! 男連れで楽しそうだな?」


 イカツイ三人の男が康平達に近付く。

 康平は初対面だが、どうやら亜樹を知っている男達のようだ。

 険しい表情になった亜樹を見て康平も緊張した。
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