臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 真ん中にいる男が亜樹に話し掛ける。

「こんな所で会えるなんてな。男と一緒なんて久し振りなんじゃねぇの?」

「あなたには関係ないでしょ! まだ中学のこと根に持ってんの?」


「藤枝、お前中学ん時なんかあったのか?」

 右側の男が、藤枝という真ん中の男に質問する。左側の男も、不思議そうな顔で藤枝を見ていた。

 どうやら藤枝という真ん中の男以外は亜樹も初対面らしい。


 藤枝は少し慌てて言い返す。

「ウッセぇよ! そんな事はどうだっていいんだよ。ただ、オメェが付き合う男のレベルが下がっ……」


 康平のタンクトップから出ている肩と腕を見た藤枝は、話すのを躊躇した。

 他の一年生もそうだが、康平も最近肩から腕にかけて筋肉が発達してきていた。


 藤枝は、警戒しながら再び話し出す。

「何かやってそうな体だな。……だがなぁ、もうすぐボクシングの県で二位だった人が来るからよ。確かライト級だったな」

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