臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 県でライト級の二位といえば、清水と相沢しかいない。別に会ったところで戦うわけでもないから、康平は平然としていた。


 藤枝は勘違いしたのか再び康平に話す。

「自信満々な顔してられるのも今だけだかんな。なんせ、県で二位だからよ、二位」


 ポカ!

 その時、誰かが後ろから藤枝の頭を叩いた。

「二位、二位ってウルセェんだよ! こっちは優勝できなくて未だに悔しいんだからよ」


 清水だった。彼は赤い派手なアロハシャツを着ていた。

「おっ、高田に亜樹ちゃんじゃねぇか?」


「こんちはッス!」康平が頭を下げる。

 続いて亜樹も挨拶した。

「浩司さん(清水)、こんにちは」


「清水先輩の事、知ってんの?」

 康平が亜樹に訊くと清水が答えた。

「知ってるも何も、家が向かいだからな。……でも亜樹ちゃん、高校生になったら一段と美人になっちゃたよなぁ」

「浩司さん! 今のオヤジ入ってるよ」亜樹はクスッと笑った。

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