臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「二人が遅いから心配して来たんだけど、何かあったの?」
そう言った綾香だったが、藤枝を見た瞬間彼女の顔が曇った。
「今度は片桐に綾香ちゃんじゃねぇか?」
清水に健太が慌てて挨拶をした。
「し、清水先輩こんちはッス!」
「浩司さん、お久しぶりです」
綾香も挨拶をしたが、曇った表情は消えていた。
「もしかして、四人でツルんでたんか?」
清水に訊かれて綾香が答える。
「はい、兄貴から映画のチケットを四枚貰ったので私が誘ったんです」
「俊也さんは、今こっちに帰って来てんの?」
「はい。顧問から頼まれて、ボクシング部の臨時コーチみたいな事してます」
清水は康平と健太を見た。
「じゃあ、オメェら俊也さんからコーチを教わってんのか?」
「あ、はい。昨日まで教わってました」健太が答えた。
「清水さん! こいつらボクシング部員ですか?」藤枝が言った。