臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
【賑やかそうな家ね……今電話大丈夫?】

【あぁ、今はダイジョウ……ブじゃないみたいだ】


 康平の父親が、風呂場から上半身裸で電話のある居間へ向かって歩いていた。

「康平、トットと風呂入れよ。ガス代もバカにならにいからな」

【後で掛け直すけど……いいかな?】

【いいけど……ゴメンね。私からの電話なのに】

【いいって気にすんなよ】


 急いで風呂と夕飯を済ませた康平は、亜樹の家に電話した。

【遅くなって悪いね。うちに電話なんて初めてなんじゃないの?】

【そうね。……でも結局康平が掛ける事になっちゃったけど】

【いいよ。うちの電話ってメインストリートみたいな場所にあっから、夜八時までは騒々しいんだよな。ところで何かあったの?】

【……綾香から聞いたと思うけど、私が中学の時にビンタしたのはあの藤枝って奴なんだ】

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