臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平は鏡で自分自身を、ガードの間から上目遣いで見るように心掛けてシャドーボクシングをした。


 三ラウンド目、再び内海が康平に囁く。

「ミットでやったパターンを反復しろ。それに左は強く打てよ」


 内海と山本は、康平だけでなく、他の三人にも同様にアドバイスしていた。


 梅田・飯島の両先生は気付いているらしいが、何も言わずに見ていた。


 康平は、ミットで打ったコンビネーションを何度も反復する。


 四ラウンドのシャドーボクシングが終わり、康平は急いスパーリングの準備をした。


 保護具を付けて開始一分前にリングへ入った康平に、山本が駆け寄る。

「お前は今から構えて、ガードの間から俊也を見てるんだ。そして、頭の中でコンビネーションを反復してろ。確か左は強く打つんだよな」

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