臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 一ラウンド終了のブザーが鳴り、康平は山本の指示を受けた。

「ワンツーのワンをもっと伸ばせ。それと踏み込んで左ボディーも打ってみろ。……繰り返すぞ。ワンを伸ばすのと踏み込んでの左ボディーだ。空振りしてもいいんだからな」


 二ラウンド目、康平は左を伸ばす事を意識してワンツーストレートを打つ。

 ツーの右ストレートを打った後、すぐに左ジャブが打てそうになった。彼はそのまま勢いで左ジャブ……というより左ストレートで追撃する。

 内海は右手を使ってこのパンチを防いだ。

 山本が言った。

「ようし、そこで踏み込んで左ボディーだ」

 康平は緊張している為か、ワンテンポ遅れて左のボディーブローを打つ。この前習ったばかりなので、打ち出しは遅かった。

 とっくに逃げたと思った内海の腕に、康平の左パンチが当たった。

 わざと康平のパンチをブロックしたようである。

 康平の左の拳に強い衝撃が残った。

 ブロックした内海が驚いた表情になった。

 山本がオーバーな位に大声で言った。

「ナーイスボディーだ。その調子でパンチを出すんだぞ」

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