臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「ちゃんと構えた所から打て!」
「反対の手を顔から離すな」
「打つ時、目をつぶらない!」
梅田は約一ヶ月後のインターハイ予選の為、先輩達を見なければならず、特に意識させたい部分を言った。
「ジャブは前六後ろ四のバランスのままで打て。打つ時は、顎を引いたまま肩の回転を使って打つ。いいか、無理しても肩を回して打てよ。六ラウンドが終わったら筋トレだ。いいな!」
「はい!」
筋トレが終わって柔軟体操をしていた一年生達に、梅田が言った。
「ジャブは、体の捻りを大きく使えないから難しいパンチだ。実戦で使えるまでに、一年位かかるつもりで根気強く身に付けろ!」
梅田は話を続けた。
「明日は、後ろの方の拳で打つストレートを教えるからそのつもりでいろ」
「はい!」
しばらくジャブだけの練習をすると思っていた四人は、返事をしながらも意外な一言に戸惑っていた。