臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 続いて山本と白鳥がリングに上がった。

 開始のブザーが鳴り、白鳥が二発の左ジャブを繰り出す。

 この一週間、重点的に練習してきた技とは明らかに違っていた。

 左ジャブを二発続けて打って一つの技なのだが、スムーズに打てないようだ。

 一発目を打ってから、二発目を打つまでの時間が明らかに間延びしている。

 それも、一発打つ度に前にツンノメリそうになるので、(ヨッコラショ)と言ってあげたい感じだ。

 内海もしきりにアドバイスするが、うまくいかない。


 一ラウンド目が終わった時、山本が言った。

「梅田先生、飯島先生、次のラウンド好きにさせて貰っていいですか?」


「今日はお前らの好きにやっていいぞ」

「この一週間はお前らが顧問だったからな」

 梅田に続いて飯島も答えた。

 二人は、最初からそのつもりだったようだ。

 二ラウンド目開始のブザーが鳴った。

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