臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 二ラウンド目開始のブザーが鳴った。

 再び内海が有馬に訊いた。

「オメェのやる事はなんだ?」

「肩を入れた左ジャブを狙わないで打つ事です」

「よぉーし、いってこい」

 内海が有馬の尻を軽く叩いて送り出した。


 有馬が左ジャブを出す。ミットで打つ時と同じような打ち方である。

「いいぞぉタケ! やれば出来んじゃねぇか」

 内海が山本と同様に大声で褒めた。その声が練習場に響く。


 褒められた有馬は、空振りするのも構わず次々と左ジャブを繰り出す。

「空振りでもいいんだタケ。離れた距離でずっとジャブを打てたら、お前のペースなんだからな」


 有馬は左ジャブの他に右ストレートも打ち始め、パンチの数が増えていく。


 三ラウンド目になっても有馬のパンチは多い。

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