臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 ただ一分過ぎになると、左腕が疲れたのかジャブの数が減ったようだった。

 この二ラウンドの間、山本の左ボディーを二度と食らいたくないのか、右パンチを打つ時以外有馬の右腕が胴体から離れる事はなかった。



 全ての練習が終わり、梅田が一年生達に言った。

「内海と山本が、お前達の練習に付き合うのは今日で最後だ。大変勉強になったと思うから、今全員でお礼をしろ」


「有難うございました」

 四人は心からお礼をし、深すぎる程頭を下げる。


 内海と山本は照れているのか、一年生達から視線をそらしていた。


 飯島が笑って言った。

「お前達も照れてねぇで、なんか一言ずつ言って帰れよ」


「え、マジっすか?」

 そう言いながら山本が前に出る。

「お前達は、今日練習の成果を出してくれて大変嬉しく思う。梅田先生と飯島先生、……そして自分が真剣に頑張った練習を信じていけば、おのずから結果もついてくる筈だ。頑張れよ!」

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