臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「こういうのは得意じゃねぇんだよな」

 内海は苦笑しながら一歩前に出た。

「あまり偉そうな事は言えないが、俺なりに思っている試合の心構えをオメェらに伝えておく。……試合中に失敗やミスをしてもすぐに忘れろ。気持ちを切り替えて、とにかく今時点での最善を尽くせ。……すると奇蹟が起きるかも知んねぇからよ」


 飯島が笑った。

「ハハハ、内海が言うと説得力があるな」

「なんスか急に?」

「だってそうだろ。お前が高校の時、よく問題を起こして梅田先生にぶん殴られていたが、失敗した事を忘れるから何回も繰り返してたんだよな」


 山本が一年生達に言った。

「俊也は昔暴れてたからよ。ヒデェもんだったぜ」

「テメェだって共犯のくせに、なに善人ぶってんだよ」


 梅田が笑いながら話す。

「結局お前らは問題を起こした後に、最善を尽くさなかったから俺にぶん殴られたわけだ」


 康平達は、普通に笑って話す梅田を初めて見た為か、戸惑った表情で見ていた。

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