臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 練習が終わり、一年生達は更衣室でゆっくりと着替えていた。

 汗でビショ濡れのTシャツを脱いだ有馬が康平に言った。

「なぁ、一昨日の先輩達強かったな」

「あぁ、カッコ良かったよな」

「俺は、石山先輩みたいになりてぇんだけどな。強打者タイプって何かゾクッとするよ」

 健太が話に割り込む。

「有馬は細身だから、タイプが違うかもよ」

「まぁ、そうかもしんねぇけど、憧れるのは自由だろ」


 そのうち、最近ハマッているゲームや学年の女の子達の事に話が脱線すると、白鳥を除いた三人の着替えが完全に止まってしまった。

 しばらくすると、主将の石山がTシャツを取り替える為、更衣室に入って来た。

「お前ら、まだいたの?」

「ス、スイマセン。すぐに着替えます」

 呆れ顔の先輩に、有馬が慌てて着替えを再開する。

「ハハ、そんなに急がなくていいよ」

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