臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 石山は、獰猛な戦い方をする割に温厚な性格のようである。

 石山が更衣室を出る時、健太は疑問に思った事を言った。

「うちの部はジックリ教える方針のようなんですけど、ジャブだけは違うんですか?」

「それはジャブをマスターするまで、ジャブだけずっと打ってたら、それだけを打つバランスになってしまうからな」

「そういうモンなんですか?」

「バランスって意外とデリケートだからさ。あ、お前らサッサと帰んねぇと怒られるぞ」

「は、はい、急いで帰ります」

 三人は急いで着替える。

 既に着替えを終えている白鳥は三人を待っていた。無口ではあるが一緒に帰りたいようだ。

 一年生達は梅田に睨まれながら、そそくさと帰っていった。

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