臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

 有馬から始まり、全員三ラウンドずつのミット打ちが終わった。一年生達は重いサンドバッグと違って、パンチを戻さなければならない感覚を味わった。

 ゆっくりシャドーが終わって柔軟体操をしている時、健太は飯島に質問した。

「先生、ボクシング部は女子マネジャーを募集しないんですか?」

「うちの部は、自分の事は自分でやらせる方針だからさ。女子選手はともかくマネジャーはとらないな」

 飯島の話を聞いた健太は、心の底から残念そうな顔をした。

 それを見た飯島が再び話し出す。

「お前らに強くなる秘訣を教えてやろう」

「それは何ですか?」

「それはモテない事さ。モテないからやることが無くてボクシングに没頭でき……」

 シラけ気味に一年生達は聞いている。さすがに飯島も、ハズシタ空気を感じ取ったようである。

「お前ら今日は学校休みなんだから、終わったらさっさと帰れよ」

 飯島はそう言って、一年生達を無理矢理帰らせた。
< 36 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop