臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
有馬から始まり、全員三ラウンドずつのミット打ちが終わった。一年生達は重いサンドバッグと違って、パンチを戻さなければならない感覚を味わった。
ゆっくりシャドーが終わって柔軟体操をしている時、健太は飯島に質問した。
「先生、ボクシング部は女子マネジャーを募集しないんですか?」
「うちの部は、自分の事は自分でやらせる方針だからさ。女子選手はともかくマネジャーはとらないな」
飯島の話を聞いた健太は、心の底から残念そうな顔をした。
それを見た飯島が再び話し出す。
「お前らに強くなる秘訣を教えてやろう」
「それは何ですか?」
「それはモテない事さ。モテないからやることが無くてボクシングに没頭でき……」
シラけ気味に一年生達は聞いている。さすがに飯島も、ハズシタ空気を感じ取ったようである。
「お前ら今日は学校休みなんだから、終わったらさっさと帰れよ」
飯島はそう言って、一年生達を無理矢理帰らせた。