臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「どうかしちゃったの?」

 那奈は心から心配そうな顔をしている。

 康平と健太は、(勉強している事を心配されている)不自然さに気づかずに、自分達がボクシング部へ入部した事、そして、ボクシング部にはテスト休みが無い事を話した。

 裕也と那奈はとても驚いていたが、裕也は複雑な表情をして言った。

「お前らもボクシングやってるって事は嬉しいんだけど、三人とも体重が近そうだから、どっちかと試合するのは嫌だな」

 四人はしばし無言になった。康平が沈黙を破る。

「そう言えば、裕也は試合出るんだって?」

「ああ、俺中三の春からアマチュアのボクシングジムに通って選手登録してたから、試合に出られるんだけどね」

 康平と健太のように、高校からボクシングを始めた場合は、一年間は試合が出来ないルールになっている。

「スゲーな。じゃあ夏の初めまで部活(野球)やりながらジムに行ってたんかよ」

 健太に訊かれて裕也が答えた。

「高校入って一年間試合に出られないのは、考えたくなかったからね。……野球部のみんなには、最後の大会前に掛け持ちしてたから今でも悪いと思ってるよ」

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