臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「入ったら挨拶せんか!」

 いきなり怒鳴り声が飛んだ。

 二人は驚き、目を閉じながら下を向いた。二人がそっと上を向くと、顧問と思われる先生が竹刀を持って仁王立ちしていた。

 中肉中背の体格で、オールバックにサングラス、そして金のネックレスまで付けている。とても教師とは思えないような風貌である。

 康平と健太は顔を見合わせ、震えながらも声を張り上げた。

「今日仮入部しました。宜しくお願いします!」

 顧問らしき先生の声が和らぐ。

「挨拶だけは、大きい声でせんとな。俺は顧問の梅田だ。今日は何もしなくていいから、そこの椅子に座って見学していろ」


 梅田が指差した椅子には、既に二人が座っていた。一人は目付きの悪い男で、有馬猛(ありまたける)と言った。

 もう一人は白鳥翔(しらとりしょう)という名前で、見るからに暗い感じがする男である。


 康平達が椅子に座ると、部紹介にいたメンバーがポツポツと入り始めた。

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