臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

「梅ッチが言い出したの?」

「梅ッチは知らないみたいだぜ」

 生徒間で梅田の事は、梅ッチと言っていた。


 有馬が話を続けた。

「森谷先輩から聞いたんだけど、言い出したのは石山先輩と清水先輩だよ」

 健太も納得した。

 石山と大崎(フライ級)、清水と相沢(ライト級)は階級がカブッていた。

 永山高校は特別な事情でもない限り、後輩の方が階級を変える。

 少ない部員なのに同じ階級で戦うのは馬鹿げているし、何より選手達がそれを望んではいない。


 健太は康平と白鳥へ理由を話す為、もう一度二人の所へ向かった。


 放課後の部活。相沢と大崎は、苦しそうな表情を一切見せずに練習していたが、練習が終わった後、体重計に乗った時だけは弱気な顔になっていた。

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