臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

 静かな口調だが、腹の底から出すような声は、有馬だけでなく他の一年生にもビシビシ伝わった。康平達は二人の様子を見ていた。


「いいえ、誰も言ってません」有馬が固まったまま答えた。

「じゃあ、何でそんな動きをしたんだ?」

「三日前の世界戦をテレビで見て、つい……」

「じゃあ訊くが、梅田先生の前でも同じ事が出来たか?」

「……出来ないと思います」

「俺の前なら出来ると思ったのか?」

「……すいませんでした!」

 言葉に窮した有馬は、飯島の顔をまともに見れず、深々と頭を下げて謝った。


「分かったなら、二度とこんな事をするな! ……お前らも練習を続けていろ」

 飯島は全員に練習を再開させたが、椅子に座って考え込んでいた。


 一年生達は、いつもより緊張した空気で練習を続けている。

 五ラウンド経過した時、飯島は一年生全員に言った。

「お前ら一旦整理運動して着替えろ!」

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