臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「お前ら、今は体重の事なんて気にするな。特に練習後の食事はちゃんと食べろよ。今の時期は、ボクシングに必要な筋肉をドンドン付ける時だ。分かったな!」

「はい、分かりました」

 飯島の話に健太が返事をした。飯島は話を続けた。

「今の段階で、他のパンチやディフェンス、スパーリングをする事はない。梅田先生も話したと思うが、前六・後ろ四の重心と、パンチを打つ軸が安定するまでは、他の技術は一切教えないつもりだ。例えば、重心と軸を崩して防御しても反撃しにくいからな?」

 飯島の話を聞いて、康平達は納得したようである。

「ところでお前ら、これからの練習で疑問があったら俺か梅田先生に質問しろ。但し、間が悪い時に質問するなよ」


 健太が早速質問をした。

「梅田先生に質問しても、怒られないんですか?」


 飯島は苦笑しながら言った。

「その点は大丈夫だ。俺も梅田先生も、頭で理解しないで練習するより理解したうえで練習した方が、数段早く上達する事を知っているから、梅田先生も喜んで教えてくれるはずだ」


 四人は意外そうな顔をしていた。飯島は時計を見た。

「もう十一時半になったし、今日はもう帰るぞ」

 時間を言われて急に空腹を感じた一年生達は、急いで帰っていった。

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