臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 中間テストが終わった。康平と健太は土日の詰め込み勉強のおかげか、それなりの感触だったようだ。

 有馬はボクシングに集中するらしく、はなから諦めていた。

 白鳥は、相変わらず暗い感じで口数も少ない。

 入学してから二ヶ月近く経ち、康平達がようやく分かった事は、白鳥が笑いたい時は口許が微かに弛む位なものだ。

 白鳥のクラスメートでも、彼に興味を持つ者は殆どいないので、それすら分からない者も多い。


 しばらくして中間テストの結果が出た。永山高校では順位の公表はない。だが康平のクラスでは、ちょっとした噂がたっていた。


 一時間目の授業が終わった直後、康平の前の席に座っている女の子が振り向いて彼に話し掛ける。

 山口亜樹(やまぐちあき)といい、康平と同じ位背が高い。肩まで伸ばしたセミロングで色は白く、鼻筋がスーッと通っているカッコイイ系の美人である。

 勝ち気な性格で、入学早々言い寄ってくるしつこい男にビンタを喰らわしたエピソードは、一時伝説になった程だ。

 話が受け身勝ちの康平は彼女にとって話し易いらしく、最近はよく話すようになっていた。

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