臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「ねぇ、君の部にいる白鳥って人、今回のテストは満点に近かったらしいよ」
「えっ、マジで?」
「なんだぁ、知らないの? 結構な噂だよ。たまに彼を見るんだけど暗そうだよね。実際はどうなの?」
「あいつは部活でも無口だからな。俺もよく分かってねぇんだ」
「コミュニケーションとれてないなぁ。ところで君は何番だったのかな?」
亜樹は、机の上に無用心に置いてあった成績表を素早くとって、康平の届かない所で見ていた。
「君は、もう少し頑張った方がいいんじゃない」
「ひでぇな! うちの部はテスト休みが無いんだぜ」
「学生は学業が本分でしょ? 言い訳しない」
「自分の方こそ何番だったんだよ?」
「さぁ、……でも君にもっと頑張れって言える位の成績だよ」
二時間目のチャイムが鳴り先生が教室に入って来た。二人は話をやめて次の授業の準備に入った。