臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「お前、俺の声が聞こえてんのか?」
梅田は、白鳥の所へ行って体全体を上から押し付ける。
左足が充分に曲がったのを確認すると梅田が言った。
「もう二度と同じ事をさせるんじゃねぇぞ」
梅田は、噂ではあるが勉強で学年トップの白鳥にも厳しく指導をする。
一年生達の練習が終わったが、康平と健太は少し残っていた。飯島に言われて始めた質問をする為である。
最初の頃は、一年生全員が話し易い飯島ばかりに質問していた。
だが梅田の淋しそうな表情を察した健太が、恐る恐る質問したところ、梅田は口許を歪めながらも熱心に説明した。
それからは梅田にも質問が飛ぶようになっていった。
今回は、健太が梅田に疑問をぶつけた。
「ジャブを打つ時、なぜ肩の回転を強調するんですか?」
「ジャブをグローブ付けて腕だけで打ったらどうなる?」