臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「腕が疲れます……あっ!」

「分かったか? 腕以外の部分の大きな筋肉を使えば疲れにくい。それに肩を回して打つと他に利点が二つある」


「それは、どんな事ですか?」康平が訊いた。

「まず、肩が回った分射程が伸びる事だ。もう一つは、回した肩で自分の顎をガード出来る事だ」


 康平と健太は、実際にジャブを打って納得したようだ。


 健太は、思い切ってもう一つの質問をした。

「先生、クラスで噂になっているんですが、中間テストで白鳥が満点に近い点数を取ったって本当ですか?」

「うちのクラスでも噂になってます」


 梅田は、少し考えた後に答えた。

「その噂は本当だ。学生は勉強が本分だからな。少しは奴を見倣え。但し、勉強出来ても練習で手抜きはさせんぞ」


 この日の練習で、梅田の言葉に嘘偽りがない事を知った康平と健太は、そそくさと帰っていった。

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