臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 木曜日。この日からインターハイ県予選が始まった。

「見るのはいいけど、やるのはチョット……」

 ボクシングについてよく聞く話だ。

 高校ボクシングも例外ではなく選手層は少ない。

 康平がいる県でも、多くて四回程勝てば優勝出来る。

 今年の開催地は裕也がいる青葉台高校だ。そして、木曜日から日曜日まで四日間かけてトーナメントを行い、全国大会に出場する者を決める。


 ボクシング部の一年生達は、木・金曜日は試合に行かず学校で授業を受けていた。


「ねぇ、康平は試合に行かなくていいの?」

 康平の前の席に座っている山口亜樹が、彼に話し掛けた。

「あぁ、俺達一年は試合しないから、応援に行くのは土曜日からだよ」

「そうなんだ」

「山口の方こそ、どっかの応援には行かないのか?」

「あたしは、キ・タ・ク・部。中学の時は部活やってたけど、先輩後輩の関係で疲れちゃってさぁ。今は気ままにって感じだよ。……それと山口って、名字でいうのはやめてくんない。照れるからさ」
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