臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 放課後。帰り支度をしている康平に、再び亜樹が話し掛ける。

「今日は部活が休みなんだ?」

「日曜日以外で休めるのは久しぶりだよ」康平は嬉しそうに答えた。

「前から不思議に思ってたんだけど、康平は何でボクシング部に入ったの? 昔はヤンチャだったとか……」

「そんなんじゃねぇよ!」

「……だよね! いくら君がイカツイ格好しても、全然怖くないしね」

「余計なお世話だよ!」


「……例えば一番あり得ない仮説だけど、康平に彼女がいてそのコに勧められたとか? ……まぁ、これは無いわね」

 決め付けるように亜樹は言った。

「ひでぇなぁ。何でそんなに入部した理由を聞きたいんだよ?」

「ほら、君はボクサーってタイプじゃないからさ。精悍でもないし、 根性無さそうだし、あとそれから……」


 康平は、これ以上悪口を言われるのはゴメンとばかりに、本当の事(部紹介で騙された事)を言った。

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