臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「アハハ! やっぱりそうなんだ。君は期待を裏切らないね。将来詐欺に気を付けた方がいいよ」

「もうボロクソだな」康平は苦笑した。


「……康平はもう帰るの?」

 少し黙っていた亜樹が言った瞬間、健太と有馬が教室に入り健太が言った。

「康平、今日試合した先輩達みんな勝ったそうだぜ」

「清水先輩と相沢先輩は相手を倒したんだってさ。見たかったよな」

「石山先輩と兵藤先輩はシードだし、土曜日まで全員残ってるといいなぁ」


 亜樹は黙って帰り仕度をしていたが、康平に小さく手を振って教室を出ていった。健太と有馬からは彼女が見えていない。

 亜樹の方へ、照れ臭そうに康平は小さく右手を挙げた。健太が気付いた。

「どうした康平。彼女と何かあったのか?」

「あいつ山口亜樹だろ」有馬がボソっと言った。

「あの入学早々男をビンタしたっていう……。お前もビンタされそうになったのか?」

「そんなんじゃねぇよ」康平は健太に言い返した。

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