臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「ハ、ハイ!」

 初めて見る公式戦に、一年生達は緊張しながら返事をした。

 前の試合でも選手のパンチが当たると、その学校の応援する者達から歓声が上がっていた。


 前の試合が終わり、入れ替わりに石山がリングへ上がった。

 康平達がいる永山高校のユニフォームは黒である。トランクスのベルトラインとサイドラインには黄色の太い線が入っている。

 石山は身長こそ百六十二センチと小柄ではあるが、その分腕が太く体全体が分厚い。

 リングに上がった彼は対戦相手を一切見ずに体を揺すり、歩きながら軽くパンチを出す。

 リングアナウンスから名前と学校を放送されると、石山は丁寧に頭を下げた。

 上下白の服を着たレフリーがリング中央で手招きをした。これから戦う二人の選手はそこに歩み寄る。そして二人はグローブを合わせ、それぞれのコーナーへ戻っていく。


「ボックス!」

 ゴングが鳴った直後、レフリーの声で試合は始まった。
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