臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 全ての試合と閉会式が終わって康平達が帰ろうとした時、会場の後片付けをしていた裕也が走って近付く。

 まず兵藤の所へ行き、深々と頭を下げた。

「試合勉強になりました。全国大会を頑張って下さい」

「お前ハート強いな! また頑張れよ」


 そして、裕也は康平と健太の方へ近付いて感想を漏らす。

「やっぱ、兵藤さんは凄いね。手も足も出なかったって感じだよ」

 康平と健太が間近で裕也を見た時、彼の体は所々にミミズ腫があった。

 そして兵藤の右フックを何発か貰ったせいか、顔面の左側は腫れて左目が細くなっていた。

 それでもスッキリした顔で話す裕也を、二人は別世界の人間のように思った。

「つ、次の大会も頑張れよ」

 二人はどう答えたらいいか分からず、別れ際に康平が一言言っただけだった。

< 66 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop